学歴別の初任給を眺めてみた!

はじめに

 とある切っ掛けで、面白そうな時系列データの存在を知りました。厚生労働省調査による「賃金構造基本統計調査」です。どうやら産業・企業規模・職種・雇用形態などな様々な切り口から集計が行われているので、様々な場面で活用ができそう。

 折角なので、どれか一つデータを取り上げて簡単に眺めてみようと思いました。そこで選んだのが、新卒者の初任給についてです。このデータを選んだ理由としては、自分の過去の経験と新卒全体の傾向がどの程度異なるものなのかを知りたいと思ったからです。

データ

 実際に眺めるデータはこちら、賃金構造基本統計調査の「企業規模別新規学卒者の初任給の推移<昭和51年~平成26年>」です。これは1976年から2014年までの39年間というなかなか長期の時系列データとなっています。

 全期間を可視化しても当然良いのですがもう少し短い期間を見たいと思い、大きなトレンド変化があったように思えた1998年以降のデータをグラフ化することにしました。グラフにするにあたっては、大卒、高専・短大卒、高卒の区分毎にそれぞれ従業員規模別に初任給の推移をみています。

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 このグラフから分かることは、第1に従業員の規模よりも学歴の方が初任給の水準の高さを決定する要因となっているようです。これは一般的なイメージ通りなので特に特筆することはないと思います。またバブル以降失われた20年と呼ばれ、データの期間においては「ゼロ成長の時代」と言われながらも若干の増加トレンドにあったように感じます。

 もちろん、これより以前の期間は明らかな増加トレンドをもっていたので、成長が鈍化したというのは間違いのない事実だと思います。ただ、このグラフだけでは各学歴毎の特徴が分かりにくいので、更に学歴ごとのグラフをみていきましょう。

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 まず大卒初任給の推移をみてみます。「学歴」は同じであるため、従業員の規模に注目してみると、従業員が1000人以上の大企業や100~999人の中堅企業と10~99人の企業では初任給に若干の差があるようです。

 また初任給の増減については、規模の如何を問わず概ね同じような動きをしているものの、従業員が10~99人の企業に関しては変動が大きいように感じます。

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次に高専・短大卒についてです。こちらは大卒と異なり、従業員が100~999人の企業と10~99人の企業の初任給が同程度である一方で、1000人以上の企業はわずかに高い水準となっています。 初任給の増減は、大卒者と異なりどの規模の企業も落ち着いているように感じる。

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 最後に高卒者の初任給は、企業の規模を問わず同じような水準となっています。ただし従業員が100~999人の中堅企業は、2003年から2011年ごろまで最も低い水準で推移しています。また増減については1000人以上の大企業よりも、それ以下の企業の方が大きな変動をしているように感じます。

おわりに

 今回の目的はあくまで面白そうなデータを眺め、どんな特徴がありそうか考えてみることにでした。そのため上の各グラフに関する説明も簡単にグラフを眺めてみた時に感じた印象です。恐らくもうもう少しデータを加工すれば、今回とは異なった事実が浮かびあがってくるでしょう。

 例えば各系列の増減については、先ずHP(ホドリック・プレスコット)フィルタを掛けてトレンド成分を除去した上で分散または標準偏差を出してみると、生データから感じる動きとは違った印象をもつかもしれません。

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